ゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバーを中心に、近年では大型犬の人気も高まっています。しかし、大型犬は暑さに弱い犬種が多く、人とのコミュニケーションも大切にするため室内飼育は必須です。
今回は、大型犬を長年飼っているドッグヘルスアドバイザーが大型犬を室内で飼うために必要なこと・注意したいことについて詳しく紹介していきます。
現在大型犬を飼っている飼い主さんも、今後飼いたいと思っている方も、ぜひ大型犬との生活に適した環境であるかチェックリストを使って確認してみてください。
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大型犬の室内飼育する前に確認したい6つのこと
ここでは、大型犬を飼う前に知っておきたい6つの注意点について紹介していきます。大型犬を既に飼っている方もぜひ参考にしてください。
室内に十分な飼育スペースがあるか
大型犬は血統証を発行しているJKC(一般社団法人ジャパンケネルクラブ)で明確な体重規定はありませんが、一般的には25kg以上の犬が大型犬に分類されます。
犬種によって体重や体高は大きく変わりますが、体が大きいため十分な飼育スペースが必要です。そのため、アパートやマンションでの飼育は理想的ではありません(十分なスペースがある場所を除く)。室内に十分なスペースがあるか考えてから飼育するようにしましょう。
なお、大型犬の飼育スペースの広さは犬種や生活スタイルによって異なりますが、リビングでも13畳前後が理想です。個室を準備する場合は、最低でも7畳以上のスペースと確保すると良いでしょう。
自由に走る庭がない場合はお散歩時間を確保
犬種によって運動量に差が生じますが、小型犬と異なり大型犬の場合は十分な運動が必須です。
一例として、私が実際に飼っているゴールデン・レトリバーの場合は1日40分程度の散歩にあわせて、庭で自由に走ることができる時間を1日2回設けていますが、同じく現在飼っている保護犬ドーベルマンの場合は1日1時間程度のジョギングにあわせて、庭で走る時間を朝晩2時間程度設けています。
犬種や年齢、個体差によって大型犬の運動量は異なりますが、いずれにしても時間に余裕がないと大型犬の飼育は難しいと考えて良いでしょう。
室内飼育であっても感染症対策は必須
大型犬に限った話ではありませんが、室内飼育であってもフィラリア予防やノミ・ダニの予防、ワクチンによる感染症対策(※1)は必須です。
特に大型犬は散歩やドッグランを中心に外で過ごす時間も多いので、感染症対策は必ず行いましょう。
(※1)混合ワクチンの種類
2種 3種 4種 5種 6種 7種 8種
一般的には5種以上の混合ワクチン接種が推奨されています。
室内飼育であっても定期的なケアは必須
大型犬は運動量が多いため、室内飼育であっても1ヶ月に一度〜2ヶ月に一度のシャンプーは必須です。また、短毛種以外は週一度はブラッシングをしてあげましょう。
犬の毛が生え変わる換毛期は一般的に春と秋とされていますが、この時期にはダブルコート(※2)の大型犬のケースでは毎日のようにブラッシングしなければいけない犬種もいます。
(※2)ダブルコートの大型犬
アンダーコートとオーバーコートが両方生えている犬種。一例として、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、グレート・ピレニーズ、柴犬、秋田犬など。
誤飲防止のために生活環境を整える
大型犬は口が大きく、誤飲に十分注意しなければいけません。誤飲や誤食をしてしまった場合、運が良ければ便で出てきたり、物によっては動物病院で吐き気を催す催吐剤で異物を体から出すことができます。
しかし、最悪の場合開胸手術が必要になり大変危険です。誤飲や誤食の危険性がある大型犬の場合は、犬の生活環境に誤飲や誤食をしそうなものは置かないようにしましょう。最近では室内フリーで大型犬を飼育する飼い主さんが多いので、事前に対策を行っておくことが大切です。
室内飼育であっても熱中症に細心の注意を払う
大型犬は極端に暑さに弱い犬種が多く、熱中症で命を落としてしまう犬も多いのが特徴です。夏場の暑い時間帯の散歩をしないことはもちろん、室内は温湿度管理をしなければいけません(※3)。
また、室内温度が低くても湿度が高いと熱中症リスクが高まります。冷房完備の部屋を準備して、温湿度計は必ず準備しておきましょう。
(※3)大型犬の一般的な快適温度・湿度
犬種や被毛の特徴、年齢、個体差によって異なりますが、一般的には20℃前後(湿度50%〜60%)が理想とされています。
大型犬を室内で飼育する前に準備したい4つのこと
ここでは、大型犬を飼う前に準備しておきたい4つの対策について紹介していきます。大型犬は股関節形成不全を中心に関節の病気になりやすいので、早めに対策を行っておきましょう。
滑りにくいクッションフロアを使用する
大型犬は体の特徴や遺伝子的な問題で股関節形成不全(※4)を中心とした病気を発症しやすいのが特徴です。
大型犬の生活環境には滑りやすいフローリングを避け、クッションフロアやペット用の滑りにくいマットレス、カーペットを準備しておきましょう。遺伝子的に関節に問題が生じる場合は子犬期や成犬期に関節に問題が生じやすいです。
しかし、滑りやすい環境で飼育をしていると成犬期後半から老犬期にかけて股関節に問題が生じやすいので、滑りにくい生活環境の対策は大型犬を迎え入れてすぐに行っておくと良いでしょう。
(※4)大型犬がかかりやすい股関節形成不全
整形外科疾患の1つで、根本的な要因は股関節の緩み。股関節が異常に形成されてしまう病気で、後肢の両方の股関節に問題が出やすいので要注意。
大きめのトイレを準備する
室内で大型犬を飼育する場合は、大きめのトイレを準備しておきましょう。犬種によっても異なりますが、ペットシーツのスーパーワイドサイズが2枚入る大きさのトイレがおすすめです。
また、オスで肢をあげてオシッコする場合は壁に防水シートを貼ったり自分でトイレを作っておくと良いでしょう。参考までに、以前飼っていたバーニーズ・マウンテン・ドッグの場合は、ペットシーツのスーパーワイドサイズが2枚入る大きさのトイレを使用していました。
高さのある食器台を準備する
胃拡張・胃捻転症候群については後ほど説明しますが、大型犬は胃拡張・胃捻転症候群になりやすいので注意が必要です。
この病気は命を奪うリスクの高い病気で、食前・食後の運動を行わないことを予防策としていますが食事台も高さがあるものを使用するのが良いとされています。胃拡張・胃捻転症候群にかかわらず、大型犬は顔の高さが高いため、食べやすさに配慮して食事台を準備しましょう。
なお、食事台の理想の高さは、大型犬が首を若干下げた状態で食事を食べることができるよう食器が犬の肩の高さにくる位置が理想です。
ペット保険は必ず加入する
大型犬は小型犬より全般的な医療費が高くなるので、ペット保険は必ず加入しましょう。一例として、愛犬バーニーズ・マウンテン・ドッグの腫瘍摘出手術では60万円弱かかり、CTやMRI検査も高額になります。
大型犬は麻酔一つにしても量が多くなったり、手術範囲も体が大きい分広くなります。その他、入院費用も高く、悪性腫瘍を発症しやすい犬種も大型犬は多いのが特徴です。
万が一の時に適切な医療を受けさせてあげるために、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。
大型犬を飼う前に知っておきたい3つのこと
ここでは、大型犬を飼う前に知っておきたい3つのことについて説明します。事前に知っておくことで心構えができるので、ぜひ参考にしてください。
胃拡張・胃捻転症候群に細心の注意が必要
大型犬は胃拡張・胃捻転症候群の発症リスクが高いため、注意が必要です。大型犬の中でも胸が深いバーニーズ・マウンテン・ドッグやドーベルマン、ボルゾイ、グレートデン、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーなどの犬種は特に気をつけなければいけません。
胃拡張・胃捻転症候群は、胃に空気が溜まって拡張して体外に排出されずに空気が溜まり、胃が捻れてしまう病気です。胃拡張の原因については明確に分かっていませんが、予防法としては食事前と食後、各1〜2時間は運動させないことが重要です。
その他、前述で紹介させていただいたように食事台を利用することが大切です。胃捻転になってしまうと緊急手術が必要になり、処置が遅れるとショック状態に陥って死んでしまうリスクが非常に高いので、十分注意しましょう。
お金と時間に余裕がないと飼うことが難しい
大型犬は食費や医療費、その他マナー袋やペットシーツなど想像以上にお金がかかります。また、大型犬に限った話ではありませんが、犬は人と共に暮らしてきた生き物で飼い主さんとのコミュニケーションの時間を大切にします。
コミュニケーションの時間や運動時間が極端に少ないとストレスが生じてしまうので、時間やお金に余裕がないと飼うのが難しいでしょう。
介護時のことを事前に考えておく
大型犬は体が大きいので、介護にも労力を使います。一例として、愛犬バーニーズ・マウンテン・ドッグのケースでは歩けなくなって歩行補助やカートでの移動などが必要となりましたが、介護には力も精神的強さもお金も必要です。
最近では大型犬用の便利な介護グッズも増えてきましたが、飼い主さんが元気でないと体に不調がある犬の体や心を支えてあげることができません。大型犬を迎え入れるときは、子犬期や元気な成犬期のことだけでなく、介護時のシュミレーションもしておくことが大切です。
介護で精神的に参ってしまう飼い主さんも多いので、しっかり生涯支えることができるか、幸せな生涯を送らせてあげられるか考えておきましょう。
大型犬の室内飼育の準備をしよう!
大型犬は存在感も大きく頭の良い犬種が多いので、しっかりとした生活環境で愛犬とのコミュニケーションを大切にしていれば、人生の良きパートナーとなるでしょう。
その反面、時間的な余裕や金銭的な余裕が必要で、生活環境も飼う前に整えておかなければいけません。子犬のうちは体が小さく扱いも簡単ですが、成犬になると体も大きくなり介護時は体力的にも精神的にもパワーが必要になります。
大型犬を家族に迎え入れたいと考えている方は、事前に生活環境を整えたり様々なシチュエーションを想定して愛犬を幸せにすることができるのか考えておくと良いでしょう。